閉店・廃業のお知らせ

日頃よりご愛顧いただきありがとうございます、札幌カリーぱお店主の山口栄子です。
この度、皆様にお知らせしたいことがございます。
札幌カリーぱおは2023年11月30日をもちまして、閉店・廃業となります。

 

去年の暮れに当店の立ち退きのお話をさせていただいてから、ずっと物件探しをしておりました。
また、たくさんのお客様からも各所の物件情報などをいただきました。
しかしながら、なかなかこちらの条件に合う物件がなく、11月末の立ち退き期限を考えるとこの夏がタイムリミットだと思っておりました。
そんな焦りの中ではありましたが、もう一度家族を交えた上で話し合いをし、廃業という結論に至りました。

 

思えば25年前、まだスープカレー店が数店舗だった頃、スープカレーもルーカレーも提供出来るカレー屋さんを作りたい!と始めたのがぱおでした。
私には3人の子供がいます。開店時からバイトをしてくれた長女は当時高校1年生、今現在お店を手伝っている次女(のんちさん)は中学1年生、そして一番下の息子が小学1年生でした。
この子達が「お母さん頑張って!」と応援してくれたのが昨日のことのようです。

 

あれから約25年が経ち、子供達の成長とともにぱおがありました。
毎日カレーの事、店の事ばかりを優先していた母親でしたが、学生時代は3人ともぱおでアルバイトをしてくれたのは親子の懐かしい思い出です。
その子供たちがこの度の立ち退きの件について、
「もうこれ以上物件探しをしても、今よりいい場所は見つからないかもしれないし、60歳を過ぎてお金をかけてまた新しい店を作っても25年はやれないよ、そろそろゆっくりしなよ」
と廃業を提案したのです。

 

自営業、特に個人営業の飲食店にはいつか終わりがあります。でもぱおは大丈夫と漠然と考えておりました。
ぱおをやめるなんて、とはじめはとても動揺しましたが、これまでのぱおにかけてきた時間や想いを自分だけのために使っていいのかと思うと、なんだか清々しい気持ちにもなっていました。
たくさんのお客様に美味しいよ、ご馳走様、と褒めていただいているのに、たまの一回SNSなどで批判的な口コミを読むとズシンと落ち込んで、いつまでもそれを引きずり今の自分の仕事に迷いが出るのです。泣きたくなるのです。
もっと若い時は逆に「チクショー!」と反骨心に燃えていたのに、やはり歳のせいでしょうか。

 

これまでの25年間、たくさんのお客様にぱおのカレーを食べていただき、本当にありがとうございました。
小さかったお子様がすっかり大きくなられて、お子様カレーからスープカレーにといつも微笑ましく見ています。
カップルでいらしていたお二人がご結婚されてお子様が産まれて、またその子の成長を見ながらカレーを作れると思っていましたがごめんなさい。
どのカレーをどんな辛さで何をトッピングして食べるのかわかるくらいの常連のお客様方がたくさんいるのに、もうそのカレーを作って差し上げられないこと。
必ずこの曜日のこの時間に来ると決まってるお客様がたくさんいるのに、その都合にもう店は開いていないこと。
朝カレーを楽しみに毎朝のように来てくださるお客様がいること。
札幌のみならず全国にたくさんのぱおを愛してくださっているお客様がいること。
全部全部、承知の上でこのような決断をした自分です。
どこへ移転しても必ず行きます!と応援してくださったお客様を裏切るような決断になりましたことをお許しください。
私自身が一番に幸せになることを考えた結果です。
自分を楽にしようと初めて開き直った気がします。
そしてそれがお客様をがっかりさせる結果になったのも事実です。
本当に申し訳ありません。
いつも一緒に働いている娘(のんちさん)が跡継ぎになればいいのに、と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
しかし娘には娘の人生があり、娘のやりたい仕事もあります。
ぱおは私が開いたお店です。
きちんと閉める責任は私にあります。
後継者につきましては、決して娘を責める事だけはないよう母親としてお願いしたい次第です。

 

そして、業者様のお力添えがなければ毎日の営業はできませんでした。
タマネギ、野菜、肉、米、スパイス、その他食材、ビール、資材、運搬など、それぞれの業者様は私共のこだわりや要求をいつも快諾して下さりました。
下手をすると、我儘と捉えられてしまう事も何度も足を運んでいただき親身になって下さった事、忘れません。
この度の決断におきましてご迷惑をおかけする事があるかもしれませんので、感謝の気持ちとともにこの場所を借りましてお詫び申し上げます。

 

足掛け25年、良いことも悪い事もたくさんのことがありましたが、今になれば一つ一つが思い出となり、勉強となったことばかりです。
立ち退きという形で11月30日、札幌カリーぱおの歴史は終わりとなりますが、その日までこれまでと変わりなくそしてこれまでの感謝の気持ちを込めて、美味しいカレーを作っていきたいと思います。
いつかまた!と言いたいのですが、今はその約束もできません。
勝手ではありますが今言えることは、ただただぱおのカレーを愛してくださってありがとうございました。という感謝の気持ちだけです。
閉店までどれくらいのお客様にご挨拶出来るかわかりませんが、最後の日までしっかり営業しカレーを作る事をご挨拶に代えさせていただきますことをご理解いただければ幸いです。

 

2023.7.31
札幌カリーぱお
店主 山口栄子